嚥下とは?

「嚥下」とは、食物が歯で細かく噛(か)み砕かれ、舌によって奥に運ばれ、飲み込まれて喉(のど)を通過し、食道に入る一連の動作です。それがスムーズに進まないのが「嚥下障害」です。「嚥下障害」が起きると食べ物をとりにくくなるため、脱水や低栄養になります。無理に食べると誤嚥性(嚥下性)肺炎や食べ物による窒息を引き起こしかねません。口から食べられなくなると、精神的に落ち込みます。

高齢者は特に要注意!

肺炎リスクにつながる嚥下障害

食事がうまく喉を通らない(嚥下障害)結果、液体や食物などを誤嚥し、それが肺に入ると、誤嚥(嚥下)性肺炎を発症しやすくなります。65歳以上の人口の割合が全人口の21%を超える超高齢社会の日本では、嚥下障害による肺炎で亡くなる方は多く、誤嚥性肺炎による死亡総数は、2019年・2020年それぞれ約4万人と報告されています。また、嚥下障害になると、食べ物を自分の口から摂取し、楽しむことが難しくなります。高齢者になっても食べる楽しみや健康的な生活を維持するために、「むせやすい」「食事に時間がかかる」「喉に違和感がある」など症状が続く場合は嚥下障害の存在を疑い、嚥下機能検査を受けることが大切です。

実は誤嚥性肺炎

日本人の死因の第6位!

65歳以上の13.8%に嚥下の問題があり1)、75歳以上の約3割に誤嚥を認めると報告2)されています。また、高齢者肺炎の70%以上が誤嚥性肺炎とがあり3)、もちなど食べ物が原因となった窒息死は令和2年では2900人以上にのぼります4)
(参考資料:1)Kei Kawashima, et al. Dysphagia 19(2004)、2)西山耕一郎ら. 日気管食道会報(2007)、3)Teramoto S, et al. J Am Geriatr Soc(2008)、4)厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計(各定数)の概況

主な死亡原因

  • 01

    悪性新生物

  • 02

    心疾患

  • 03

    老衰

  • 04

    脳血管疾患

  • 05

    肺炎

  • 06

    誤嚥性肺炎

(参考資料)厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計(各定数)の概況

チェックで確認!!

あなたも嚥下障害かも?

A B C
01 肺炎と診断されたことがありますか? A:繰り返す B:一度だけ C:なし
02 やせてきましたか? A:明らかに B:わずかに C:なし
03 物が飲みにくいと感じることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
04 食事中にむせることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
05 お茶を飲むときむせることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
06 食事中や食後、それ以外の時にものどがゴロゴロ(たんがからんだ感じ)がすることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
07 のどに食べ物が残る感じがすることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
08 食べるのが遅くなりましたか? A:しばしば B:ときどき C:なし
09 硬いものが食べにくくなりましたか? A:しばしば B:ときどき C:なし
10 口から食べ物がこぼれることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
11 口の中に食べ物が残ることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
12 食物や酸っぱい液が胃からのどに戻ってくることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
13 胸に食べ物が残ったり、つまった感じがすることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
14 夜、咳で寝られなかったり目覚めることがありますか? A:しばしば B:ときどき C:なし
15 声がかすれてきましたか?(がらがら声、かすれ声など) A:たいへん B:わずかに C:なし

(参考文献)藤島一郎、他. 臨床リハ(2002)

結果を見る

原因は何?予防は可能?

嚥下障害の原因は、以下のように脳血管障害だけでなく、脳外科領域・耳鼻咽喉科領域・神経内科領域・消化器科領域、呼吸器領域など多岐にわたります。

嚥下障害の原因と分類

器質性
嚥下障害
腫瘍・腫瘤・外傷(手術を含む)・異物・奇形(口唇口蓋裂等)・瘢痕狭窄(炎症後など)その他(食道web、Zenker憩室、Forestier病など)
運動障害性
嚥下障害
脳血管障害(偽性球麻痺、Wallenberg症候群など)・変性疾患(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症など)・炎症(脳幹脳炎、ギラン・バレー症候群など)・腫瘍(傍腫瘍症候群など)・中毒(有機リン中毒など)・外傷(手術を含む)・筋疾患(多発筋炎、重症筋無力症、封入体筋炎など)・内分泌障害(ステロイドミオパチー・甲状腺ミオパチーなど)・代謝性疾患(アミロイドーシス等)・その他(喉頭麻痺など)
機能性
嚥下障害
嚥下時痛をきたす疾患(急性咽喉頭炎など)・心因性(ヒステリー・拒食症など)・咽喉頭異常感症・高齢者

(参考:よくわかる嚥下障害ー②嚥下障害の原因と疾患ー より引用)

予防は可能です

現在の超高齢社会では、加齢に伴う身体機能の低下が深刻化しております。そこで、嚥下障害を含む身体機能障害が生じるような要介護状態を防ぐためにも、適切な介入・支援により生活機能の維持・向上が可能と考えられる「フレイル」の時期に、「嚥下障害を早期発見し、対策を立てる」ことが大切です。食事でむせる回数が多くなって気になったら、かかりつけの医師に相談しましょう。

(参考)鈴木隆雄 厚生労働科学研究費補助金総括研究報告書 2017より改変

院長は日本嚥下医学会認定の
嚥下相談医

嚥下障害は、頭頸部の解剖生理に詳しく、内視鏡の操作に習熟している耳鼻咽喉科医の診療が望ましいとされています。

当院の診療内容

  • 院内での嚥下内視鏡検査(小児用喉頭ファイバーあり)・嚥下造影検査・栄養状態評価・内服薬の副作用確認
  • 来院できる軽度から中等度の嚥下障害の方へのリハビリ
  • 移送や移乗が困難な方やベッド上安静が必要で往診での対応が必要な方への往診での嚥下内視鏡検査を含む嚥下機能評価(往診の場合実施できる内容に限界があります)

また嚥下診療には事前の情報収集が非常に大切なため、事前に電話予約の上、問診票の記入または紹介状の持参をお願いしています。嚥下障害の問診は項目が多いですが、重要なことですので、ご協力をお願いいたします。
かかりつけ医や施設や療育機関への情報提供も行っております。肺炎治療が必要な場合は、かかりつけ内科や総合病院内科へ紹介させていただきます。パーキンソン病等神経筋疾患等を疑い精査必要な場合は、神経内科や脳神経外科へ紹介させていただきます。嚥下機能改善・誤嚥防止術が必要な場合は、大学病院や総合病院耳鼻咽喉科へ紹介しております。
希望する食事が食べたい・少しでも改善したい・これ以上悪化させたくないと考えているご本人・ご家族・支える医療スタッフの力になることを目的に診療しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

当院の嚥下障害診療
アルゴリズム

ALGORITHM

  • 1.対象患者

  • 2.問診

    原疾患、基礎疾患、既住歴、服薬内容、摂食状況、栄養摂取方法、介護状況

    狭義の摂食障害を除外

  • 3.精神機能・身体機能の評価

    意識レベル、理解度、認知症の有無、移動能力、頸部・四肢の運動性、栄養状態

    狭義の摂食障害を除外

  • 4.口腔・咽頭・喉頭などの診察

    鼻咽喉閉鎖機能、舌・軟口蓋の運動性、咽頭絞扼反射の状態、声帯麻痺の有無、発声・構音機能、気管切開孔の有無と状態

  • 5.嚥下内視鏡検査

    内視鏡を用いて実施する嚥下機能検査です。のど等の器質的・機能的異常の有無や、気道防御反射の状況を観察します。

  • 6.嚥下造影検査

    造影剤または造影剤を含む食べ物を飲み込んで、造影剤の動きや嚥下関連器官の状態と運動の様子をX線透視下に観察する嚥下機能検査です。特に誤嚥の程度や、食道入口部の開き方の状況など、内視鏡では観察できない項目を評価することができます。

対 応 基 準

  • 外来での
    経過観察
  • 外来での
    嚥下指導
  • より専門的な
    医療機関へ紹介
  • 評価・治療の
    適応外と診断
  • 定期的な嚥下機能評価
  • 嚥下障害の原因の精査
    外科的治療
  • 栄養管理
    気道管理

嚥下障害診療ガイドライン2018年版を一部改変し作成

当院の設備

FACILTY

  • 嚥下内視鏡検査(VE)

    内視鏡(小児用・成人用あり)を用いて実施する嚥下機能検査です。のど等の器質的・機能的異常の有無や、気道防御反射の状況を観察します。

  • 嚥下造影検査(VF)

    造影剤または造影剤を含む食べ物をのみこんで、造影剤の動きや嚥下関連器官の状態と運動の様子をX線透視下に観察する嚥下機能検査です。

  • 採血・酸素濃度測定など

    気管支炎・肺炎による炎症状況の確認や栄養状態の確認を行います。

  • 往診時

    携帯用ファイバーを用いた評価を行います。しかし往診では嚥下機能の詳細な評価が困難であるため、経口摂取開始可能かどうかなどの重要な相談であれば、介護タクシーなどを利用した来院による詳細な評価をお勧めしております。

治療方法

TREATMENT

  • 対応方法の指導

    「栄養状態評価」や「嚥下障害の副作用のある薬剤リスト」も含めて、詳細な嚥下機能評価結果と動画を関係先へ報告。推奨する対応方法も指導します。

  • 嚥下訓練

    希望があり、通院できる方には、当院言語聴覚士による嚥下訓練を行います。また、嚥下リハビリテーションの分野で感覚刺激療法として注目され効果が報告されているジェントルスティムを2016年3月より導入し、嚥下訓練に利用しております。また、嚥下調整食や栄養補助食品の説明を行います。

  • 総合的な検査・評価

    並存する嗅覚・聴覚障害、音声障害、鼻副鼻腔疾患・咽頭喉頭炎・扁桃炎など頭頸部領域の急性炎症の検査や治療も可能です。

  • 他医療機関との連携

    肺炎治療が必要な場合は、かかりつけ内科や総合病院へ紹介します。嚥下障害の原因についての精査が必要な場合は、脳神経外科や神経内科のある医療機関に紹介します。手術(嚥下機能改善術・誤嚥防止術)が必要な場合は、大学病院や総合病院へ紹介します。

嚥下内視鏡検査や
嚥下造影検査の
診療実績

ACHIEVEMENT

これは開院してから2021年7月までにVE検査を行った延333名の性別と年齢です。平均77.9歳、3歳から100歳まで検査を行いました。

2021年7月までの当院への紹介状況と他院への紹介状作成状況です。全症例の51.8%(85/164)が他院から紹介で来院されております。また、他院からの紹介でない場合は、53.2%(42/79)に紹介状作成し、原因精査目的の頭部MRIや胃カメラなどを勧めております。

2021年7月までのVE件数の年次推移です。月4件ほど実施しておりました。

2021年7月までの一人当たりのVE実施件数について調べたところ、平均2.02回であり、その75%が1回の評価のみでした。また往診例もその75%が1回のみの評価でした。1回の評価で重要な治療方針を決定する必要があるため、事前の詳細な情報収集や、VEとVFを併用することが重要です。

2020年9月~2021年8月までにVF検査を行った延56名の性別・年齢です。約1年の間に延べ56名の検査を行いました。

受診の流れ

FLOW

  1. 01 電話予約

    嚥下障害の検査・相談をご希望される場合は、電話でのご予約をお願いしています。予約のお電話は診療時間内で受け付けております。
    TEL:0942-38-0801

  2. 02 事前問診の実施

    Web問診表の記入をお願いします。ご自宅でパソコンやスマートフォンから入力できます。また紙の問診表が必要でしたら、事前にお渡しし、来院時までに持参していただきます。

  3. 03 来院

    可能であれば事前問診表、かかりつけ医の紹介状を持参の上、来院。

  4. 04 検査

    院内で栄養状態の評価や詳細な嚥下機能検査をさせていただきます。1日1~3件の完全予約制です。

  5. 05 検査結果説明

    多くの場合1回の評価で経口摂取の可否など重要な治療方針を決定する必要があります。そのため、評価や検査結果を時間をかけて解析し、後日、医師より結果や今後の治療方針について説明させていただきます。

よくあるご質問

FAQ

  • ジェントルスティム(干渉波刺激装置)による嚥下訓練とは何ですか?

    近年、嚥下障害へのリハビリテーション治療の1つの手法として、中枢・末梢神経に体表から非侵襲的な方法で電気刺激を加えながら訓練を行うと、従来の訓練への上乗せ効果が得られるというエビデンスが集積しており、亜急性期以後の脳卒中による摂食嚥下障害に対して、咽頭部への経皮的電気刺激療法が推奨されています。干渉波刺激装置の嚥下動態への効果については、2012年にFurutaらは健康成人における嚥下回数の増加を報告し、基礎研究では2017年にUmezakiらはモルモットにおける嚥下惹起までの潜時の短縮など嚥下動態への補助的効果を報告しています。臨床例への効果については、2017年にMaedaらが咳テストの潜時短縮と、経口摂取量増加を報告し、2018年に杉下らは喉頭挙上遅延時間(LEDT)が短縮した症例を報告しており、嚥下反射が遅延した症例への干渉波刺激装置活用が望まれています。
    (参考論文:Furuta T., et al. Dysphagia (2012)、Umezaki T., et al. Exp Brain Res (2018)、Maeda K., et al. Clin lnterv Aging (2017)、杉下周平ら. 日摂食嚥下リハ会誌(2018))

  • 嚥下調整食分類とは何ですか?

    正式名称は「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」です。日本においては従来、統一された嚥下障害者への嚥下障害重症度別食事提供段階や、液体へのトロミの付け方が存在せず、地域や施設ごとに多くの名称や段階が混在していました。そこで、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が中心となり、国内の病院・施設・在宅医療および福祉関係者が共通して使用できることを目的とし、食事(嚥下調整食)およびとろみについて、段階分類を示しております。成人を対象として作成されました。

  • 嚥下訓練は、パタカラ体操や口の体操だけでいいのですか?

    嚥下訓練は嚥下障害の病態に応じて実施することが重要であり、嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査の所見を参考にして、口腔・咽頭期の嚥下障害の病態に応じた訓練法を選択すべきです。以下に口腔・咽頭期の嚥下障害の病態に応じた嚥下訓練法を転載します。(参考資料:嚥下障害診療ガイドライン2018年版)

  • 嚥下障害に対する外科的治療には、どのようなものがありますか?

    大きく分けて、呼吸及び発声機能などの喉頭機能を温存しつつ経口摂取を目指す嚥下機能改善手術と、発声機能は失うが誤嚥を確実に回避することを目的とした誤嚥防止手術があります。嚥下機能改善手術は障害された機能を補填し経口摂取を目指すもので、嚥下訓練などの保存的治療が奏功しない場合に考慮される外科的治療です。術後にも嚥下リハビリテーションが必要です。手術で必ずしも期待通りの効果が得られない場合もあり、術後も機能障害は残存しており、誤嚥の可能性を考慮しつつリハビリテーションを継続する必要があります。誤嚥防止手術は、気道と食道を分離することで誤嚥を消失させる方法です。一般的に発声機能は失われ、永久気管孔が造設されます。誤嚥防止が目的であり、必ずしも術後の経口摂取を保証するものではありません。術後には永久気管孔の管理が必要になります。(参考資料:嚥下障害診療ガイドライン2018年版)

医院概要

ABOUT

医療法人はかたみち はかたみち耳鼻咽喉科

〒830-0003 福岡県久留米市東櫛原町450-1

Mail : st117hakatamichi@gmail.com

受付時間
9:00~12:30 / 14:30~20:00

【平日(水曜以外)】
9:00~12:30 / 14:30~20:00

【水曜日】
14:30~20:00

【土曜日】
9:00~12:30 / 14:00~17:00

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診療時間(休診日:日曜・祝日)
9:00~
12:30
× ×
14:30~20:00 ×

※▲:一般診療は18:00まで。言語訓練は20:00まで。

※■:14:00~17:00

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